師匠はコスプレ☆メイ探偵
ケースに背中をもたせて、正面の絵を見た。

よく分からない抽象画がかけられている。

「そうだ。間違いないと思う。いつか誰かが動き出すんじゃないかと思っていたのだ。そおしたら、ルビヌスの星が盗まれた。そしてサフィルスだ」

 類は目の前の絵を理解してみようと思って、体を横に九十度に曲げてみた。

 残念ながら、見える世界が変わっても、抽象画の世界を理解するにはいたらなかった。


「何をしているんだ?」

「いえ」

 自分の行動を、いちいち説明するのも面倒だった。

 理解してもらおうとも思わない。


「誰が何のために動き出したんですか?」

「それは、モゴーグ国か、あるいは、国宝を自分の過失で盗まれた当時の館長の、子孫、とか。わたしは後者のほうだと思うのだが」


「動機が弱くないですか?」

「おそらく孫あたりが、その話を知っていて、館長の苦しむ姿を見ていたのだ。それで、いつか取り返してやろうと思っていたのだ」

「いや、だから動機が弱くないですか?って。盗みは犯罪ですよ」

「それだ」


 類は目を見開いて師匠を見ると、大きな身振りであちこちを振りあおいだ。

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