師匠はコスプレ☆メイ探偵
「影山直樹だ」
類は考えた。
そんな探偵も、スパイも殺し屋も、知らない。
「って、誰です?」
「わし自身だ」
類はヒールの片足を横に向けて、ガクッとなった。
やるんなら、いっそ徹底してコスプレをやってほしかった。
「それより、成瀬さん、見違えましたよ。あなたって、ただのバカ食い女かと思ってたけど、実はすっごく、いいオンナ、なんですね」
誰が、ただのバカ食い女だ。
その通りだけど。
類はそれでも腹が立つのでトキを睨んだ。
トキは類の視線をきっちり無視して、
「今七時ちょっと前です。会場は七時半ですから、どうにか間に合うでしょう」
言って、切符を渡された。
「さて、行きますか」
この格好のまま、電車に乗るのは少々目立つが、この際仕方ない。友人の結婚式か何かに呼ばれていくんだと思われるだろう。