ソラと太陽と
「もうほんっとありえない!!何日徹夜させれば気がすむの!?
めっちゃ寒いしさぁ、もうほんとやだ〜。」

「しょうがないよ〜ショーまであと少しだもん。がんばろー。」

新宿の街は11月半ばだというのに、もうクリスマスの光り輝くネオンに彩られている。


「てかさぁ、こんな早いうちからライトアップして、電気代の無駄だよね。」

「ほんとだよ。温暖化だねー。」


そんなネオンをハートマークの目で眺めるほど暇な人間は、まだこの時期にこの新宿の南口にはいない。


同じ大学の明奈と友紀が、2年間使い続けているくたびれた学校のカバンを重そうに持ちながら隣で話している。


夜の甲州街道は学生とサラリーマン、OLの人込みで溢れかえる。

「あ!信号点滅だよ!走ってこ!!」


大きな道路は、曲がってくる車と反対側から渡ってくる人で埋めつくされる。
うまく歩かないと向かってくる人にぶつかったり、並んでいた友達を見失ったりしてしまう。


「あれ?ソラは?」


点滅する横断歩道を走りながら渡り切ったところで、ソラがいないことに気付いた2人は立ち止まって振り返った。


「あれ!?ソラ渡ってなかったんだ!?」

振り返ると、そこには道路の反対側で信号待ちをするソラの姿があった。


「ごめんごめん、さっきの渡ってなかった〜!」

信号が青に変わると、謝りながら2人の元にやってきた。

「目の見えないおじさんがいたからね、信号が変わるの教えてあげてたんだ。ここ、人混みすぎて音聞こえないからさ。」


「そっか〜。全然いいよ、大丈夫!」

少し驚いたような顔を一瞬見せた明奈。

「‥彼氏、調子‥どう?」

少し聞きにくそうに遠慮がちに言う友紀。

「んー‥なんも変わらないけど。新宿は住みにくい街だね。」

なんとなく話す気にはなれなくてサラっとかわしてしまった自分。


今は、自分の置かれている現状を誰にも彼にも話せるほど、まだうまく整理ができていない。


今はまだ、幸せだった過去を振り返ってしまう自分がいる。


通り過ぎる人を、隣にいる友達を、羨んで、恨んでしまう自分がいる。


私と彼が出会ったのは、生後半年。

今から20年も前のこと‥
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