王子様は寮長様
「九条、帰るぞ。」
「はい。」
放課後、相馬先輩が迎えにくる。
私は急いで廊下に出た。
あれからも、私達は変わらず一緒に帰っていた。
気まずくないかって?
時々…ね。
でも、やっぱり、どういう真実だって…側にいたいと思ってしまう。
この気持ちだけはどうしようもないよね…。
「あっ!椎菜先輩ー!」
突然、大きな声で呼ばれる。振り返ると同時に何かが飛びついてきた。
「ぅきゃぁ!?なっ…! 野上くん!?」
子犬のような笑顔で野上くんが私にくっついていた。
ビックリしたでしょう~
「驚いた?ごめんなさい。先輩の事何回か呼んだんですよ?でも気が付いてくれないから…」
そう言う野上くんはくっついたままだ。
困っている私を見兼ねてか、相馬先輩がそっと引き離してくれた。
「野上。九条が困っているだろ?」
「相馬寮長。すみません。椎菜先輩が見えたからつい…。」
野上くんはやっと離れてくれた。