王子様は寮長様


「九条…」



机に寄り掛かっていた先輩が私に向き合う。

どうしたんだろう。なんだか様子が変だ。



「どうしたんですか?」

「…野上と何話した?」



ドキッ。

えっ…。何って…。



「どうして…そんなこと聞くんですか?」

「…何となく。」

「別に…何も。演奏を聞いただけです。」

「本当に?」



相馬先輩の顔は真剣だ。何故そんなことを聞くのだろうか。



「…はい…」

「そう…。」

「じゃぁ、私部屋に戻りますね。」



空気が重くなってきたから、私は逃げるように寮長室を出ようとした。



「九条っ。」



後ろから相馬先輩が呼び止める。



「…はい?」

「…俺たち…、こういう関係じゃなかったら……どうなっていたかな…」

「せん…ぱい…」



突然の先輩のセリフに心が大きく動揺する。

どうなっていたか…?


そんなの、わからない。


考えたくない。

考えたところで、それは儚い夢だから。


涙が出そうになるのをグッと堪える。




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