王子様は寮長様
莉子から知らせを受け、蒼斗が保健室に行くとベッドには椎菜と、それを泣きそうな顔で見つめる野上の姿があった。
「あ、寮長…。」
「九条は大丈夫なのか」
「ボールが頭に当たったんですけど、軽い脳震盪だそうです…。」
「そうか…」
蒼斗はホッと胸を撫で下ろす。
椎菜は小さく寝息を立てていた。
「すみません、寮長。」
「…なぜ俺に謝る。」
「…僕、椎菜先輩に良いとこ見せようとして…そしたらボールが当たっちゃって……。」
野上はシュンとしている
蒼斗は小さくため息をつく。
「好きな人の前で良いとこ見せたいのは当然だ。…これから気をつければいいさ。」
「……焦ったんだと思います。」
「焦る?」
野上はシュンと下を向いたまま顔を上げない。
「椎菜先輩…、笑顔だったんです。」
「笑顔?」
「その笑顔が…寮長に見せている笑顔と同じだったから…。あぁ、今、寮長のこと考えているんだなって思ったら…焦ったんです…」
蒼斗は椎菜を見つめた。
笑顔の違いなんて気が付かなかった。
そんな椎菜をとても愛おしく感じた。