王子様は寮長様
「臆病になるのも分かるけどさ、このまま椎菜ちゃん取られてもいいの?嫌だろ?」
蒼斗は答えない。
しかし猛は構わず続ける
「お前が飛び込まない限り、椎菜ちゃんは苦しんだままだぞ。」
「…わかってるよ」
「なら、気持ちぶつけろよ。」
猛の真剣な声に、蒼斗は思わず猛を見つめる。
「ひとりの男として、頑張れよ。」
ニッと笑い、蒼斗の肩をパンッと叩く。
「まぁ、結果的にマズイことになっても、俺がなんとかするから。任せて下さい?次期社長?」
軽い口調でおどけてみせる猛だが、蒼斗には何よりも心強かった。
この男が居てくれるなら、SOOMAの社長も悪くないとも。
「ありがとう、頼りにしてるよ。俺の右腕として。」
猛は嬉しそうに空を見上げる。
空は蒼斗の心を写しているかのように、今にも雨が降りだしそうだった。