王子様は寮長様
ザァァーと雨が窓を叩きつける。
夕方になって降ってきた雨は本格的に強くなってきた。
「雨の音で僕の演奏が聴こえなくなっちゃいそうですね。」
野上くんは笑いながらバイオリンを構え、演奏を始める。
コンクールに向けて、凄く練習してるのがわかるなぁ。
聴くたびに上手くなっているもん。
レッスン室のソファーに寄り掛かりながら、ゆったりと演奏を聴く。
いつの間にか二曲目になっていた。
野上くんの演奏を聴きながらも、脳裏には相馬先輩がチラつく。
野上くんが私を誘えば誘うほど、先輩を想う時間が増えてきていた。
演奏がピタッと止む。