王子様は寮長様


顔を上げると、野上くんが拗ねたような顔でバイオリンをテーブルに置いた。



「どうしたの?」



ドカッと隣に座った野上くんに聞く。

怒ってる?



「先輩、聴いてないでしょう。」

「え?そんなことないよ。聴いてるよ?」

「気持ちはここにないみたいだけど?」



ドキッ。

鋭いなぁ。顔に出てたかな。



「ごめん。ちゃんと聴くから。」

「また相馬寮長のこと考えてたんですか。」



野上くんは不機嫌そうに聞いてきた。

怒らせちゃったなぁ。



「ごめんね。だから野上くん、もう一回…」

「そんなに寮長が好きですか?」

「えっ…」



野上くんは悔しそうな表情で私を見つめる。



「僕は椎菜先輩が好きです。寮長には渡したくない。」

「野上くん…」



ストレートな言葉に戸惑ってしまう。


でも、今がちゃんと言うべき時かもしれない。


野上くんの気持ちには答えられないと。



「あのね、野上くん。私……っきゃぁ!?」




< 156 / 217 >

この作品をシェア

pagetop