王子様は寮長様
顔を上げると、野上くんが拗ねたような顔でバイオリンをテーブルに置いた。
「どうしたの?」
ドカッと隣に座った野上くんに聞く。
怒ってる?
「先輩、聴いてないでしょう。」
「え?そんなことないよ。聴いてるよ?」
「気持ちはここにないみたいだけど?」
ドキッ。
鋭いなぁ。顔に出てたかな。
「ごめん。ちゃんと聴くから。」
「また相馬寮長のこと考えてたんですか。」
野上くんは不機嫌そうに聞いてきた。
怒らせちゃったなぁ。
「ごめんね。だから野上くん、もう一回…」
「そんなに寮長が好きですか?」
「えっ…」
野上くんは悔しそうな表情で私を見つめる。
「僕は椎菜先輩が好きです。寮長には渡したくない。」
「野上くん…」
ストレートな言葉に戸惑ってしまう。
でも、今がちゃんと言うべき時かもしれない。
野上くんの気持ちには答えられないと。
「あのね、野上くん。私……っきゃぁ!?」