王子様は寮長様
「周りの大人の話から、親父にもうひとり子供がいるかも知れないって思ったら、ますます距離を置いてたし。」
猛先輩も相馬先輩も、まるで私に知っておいて欲しいとでも言うように、話を続ける。
「SOOMAの跡取りとして周りは“相馬蒼斗”に媚びるから余計にこいつは自分の存在が嫌になっていってたんだ。」
「そう。近寄ってくる人、みんな、“俺”じゃなく、SOOMAと親しくしたいから。…猛しか信じられなかったんだ。」
以前から相馬先輩はひとりの“蒼斗”として、見てもらいたがっていた。
SOOMAを抜きにした付き合いをしたかったんだね。
「今は何人か“俺”を見てくれている。九条にも出会えたし、だから俺は…」
相馬先輩はチラっと私を見て微笑んだ。
「負けない。」
「先輩…。」
「心配いらないよ。」
「はい。」
私は力強く頷いた。
相馬先輩となら大丈夫。
で?と猛先輩が聞いてきた。