王子様は寮長様
「あ、雪ですよ。相馬先輩。」
「あ、本当だ。どうりで寒いはずだよな。」
先輩は隣で窓の外を見ている。
そとはチラチラと雪が舞っていた。
あの日から数ヶ月たち、季節はすっかり冬。
先輩は先日、大学の推薦を終えたばかりだった。
春からは大学生。
「あのさ…」
「はい?」
先輩を見上げると、なんだか気まずそうな表情で外を見ている。
なんだろう?
「クリスマス…なんだけど…」
「あぁ、もうすぐですね」
もうすぐクリスマス。
恋人たちのビックイベントだ。
「…会社のパーティーに出なきゃいけなくなっちゃった。」
「…えっ!?」
“なっちゃった”って可愛い言い方してるけど、つまり、それって……
「ごめん。一緒に過ごせない。」
「えぇ~……」
恋人たちのビックイベント。
初めての二人のクリスマスが~。
一緒に過ごせないの!?
「そのパーティー、大事なプロジェクト発表もあってさ…」
「そぉですか…。」
それじゃぁ仕方ないよね
大事なプロジェクト発表なら、次期社長は出席しなくちゃだよね。
凄く!すごーく、寂しいけど、それで我が儘は言えないしね。
「わかりました。」
「ごめん。でも、すごい企画発表だから、九条も驚くと思う。」
「?そんなに大きなプロジェクトなんですか?」
「あぁ。」
へぇ~。先輩が仕事の話するなんて珍しいから、かなり大きな企画なんだろうな。
新型製品とか?新しい企業展開とか?
相馬ほどの企業なら何でも出来るんじゃないだろうか?