王子様は寮長様
「いいにおい。」
パッと顔を上げると相馬先輩がいつの間にか隣に立っていた。
「もう終わったんですか?」
「まぁね。」
先輩ひとりで出来るんなら私いらないんじゃないかなぁ。
そう思ったが口にするのはやめた。
「このコーヒー、珍しい銘柄なんですか?聞いたことない。」
「さぁ。知らん。」
「?先輩のでしょう?」
「もらったんだ。だからよく知らん。」
ふいっ、とリビングに向かって行ってしまった。
あれ?なんかマズイこと聞いちゃったかな。
私はコーヒーを持ってソファでテレビを見ている先輩に渡した。
「相馬先輩…、ごめんなさい。私、変なこと聞いちゃたみたいで…。」
無表情にテレビを見ていた先輩に謝った。
ん?と先輩は顔を上げ、ニコッと笑った。
「別に九条が謝ることじゃないから。」
「でも、なんかマズイこと聞いちゃったかなって思って…」
先輩はフッと笑って隣に座るよう指さした。
私は大人しく座った。
「別にマズイことじゃない。気にするな。てか、気にさせたのは俺か。」
ハハッと笑い、コーヒーを飲む。
「うん。九条がいれたコーヒー美味しいよ。」