王子様は寮長様

寮長様



桜の木が蕾をつけはじめた頃ーーーーーー


寮長室には花束やらプレゼントが置かれていた。



「…凄いな。」



相馬先輩は腕組みをしながら呟いた。

せっかく整理したのに、また片付けなきゃだね。



「それほど先輩の卒業をみんなが惜しんでるんですよ。」

「気持ちだけでいいんだけどね。」



でも先輩はちょっと嬉しそう。


私立早乙女学院は今日、卒業式を迎えた。


答辞を読む先輩はまるでステージに立つ芸能人のようにキャーキャー言われていたけど。



「明日、寮を出るんですよね?」

「あぁ…。」



先輩は寮長の机を撫でる


「淋しいもんだな。卒業って。」



ぽつりと呟く。


学院の王子様でもあった


そして皐月寮、寮長として二年間座った席。


私達が出合った寮。


何もかもが懐かしい。



もう、相馬先輩が教室に迎えに来てくれることはない…。




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