王子様は寮長様
私はため息をついて、携帯をかけた。
プルル…プルル…
「もしもし。あの…九条 椎菜ですけど。」
『あぁ、お久しぶりでございます。椎菜さん。今回はどのようなご用件ですか?』
電話の男性は柔らかく返事をした。
「えっと…、二年に進級しまして、その、皐月寮に入寮が決まったんです」
『それはおめでとうございます。』
「それで、その…あの人に伝えていただけますか。生活費の方はもう結構ですと。」
『あの人…ではなく、貴女のお父上ですよ?』
静かにたしなめられた。
父上って…。会ったこともないのに…。
「とにかく、後は母のお金でなんとかなりますから…」
『そうはいきません。旦那様も卒業まで貴女様の 生活を保障するとおっしゃっています。皐月寮に入られても今まで通りです。』
…言うと思った。
説得を試みるがやはり断られてしまった。
「…わかりました。では感謝しますとお伝えください。」