王子様は寮長様
相馬先輩はズンズンと歩き、部屋に入っていった。
中に入ってもいいかちょっと迷ったが、意を決して入っていった。
相馬先輩は薄暗いリビングに立っていた。
先輩はさっき雨に打たれたのか、制服のワイシャツが少し濡れていた。
「先輩…?着替えないと風邪引きます。」
相馬先輩はうん、とゆっくり振り返った。
よかった。さっきの冷たい表情はない。
でも、私の胸はまだざわついていた。
あんな顔の先輩を初めてみたせいかもしれない。
私が何も言えないでいると、先輩が近寄ってきた
「九条、ちょっとだけ、いいか?」
「え?」
そう言って、先輩はポケットに手を入れたまま、頭を私の肩に乗せてきた
「せ、先輩!?」
ワタフタと戸惑う私。
しかし、先輩は黙ったままだった。
「相馬…先輩…?」
先輩は小さくうんと言った。
「こどもの喧嘩に親を出すなんてバカらしいよな。」
先輩は低くつぶやいた。