王子様は寮長様
二人きり
「九条がまだ帰っていない!?」
「あぁ、もう日が暮れてるって言うのに。」
奈緒と猛が心配そうな顔つきで蒼斗に伝えてきた
蒼斗は奈緒から、散歩に行ったと聞いていた。だから後からすぐ戻ってくると思っていた。
辺りは薄暗くなってきているのに、帰って来た様子はない。
今日の椎菜の格好は水着に短パン、パーカーという海辺スタイルだ。
そんな格好で遠くまでは行っていないだろう。
「携帯も部屋だし、多分近くにはいると思うけど…、大丈夫かしら?」
「なぁ、誰か副寮長見てないか?」
猛が何人かに声をかける
みんな、首をかしげるばかりだ。
「あ、俺見ましたよ。」
一年の寮生が手を挙げた
「どこにいた?」
「女の人と歩いてました。…あの人たち、どこかで見たことあるんですよね。」
「誰だかわかるか?」
「……あ!寮長!寮長の取り巻きの中にいた顔ですよ。」
猛と蒼斗は顔を見合わせた。
「どっちに行ってた?」
「あの岩場のほうです」
それを聞くと同時に蒼斗は部屋を飛び出していった。
「あの女たち、来てたのね!」
「あぁ。マズイことになってなきゃいいけど…」