王子様は寮長様

二人きり




「九条がまだ帰っていない!?」

「あぁ、もう日が暮れてるって言うのに。」



奈緒と猛が心配そうな顔つきで蒼斗に伝えてきた


蒼斗は奈緒から、散歩に行ったと聞いていた。だから後からすぐ戻ってくると思っていた。

辺りは薄暗くなってきているのに、帰って来た様子はない。

今日の椎菜の格好は水着に短パン、パーカーという海辺スタイルだ。

そんな格好で遠くまでは行っていないだろう。



「携帯も部屋だし、多分近くにはいると思うけど…、大丈夫かしら?」

「なぁ、誰か副寮長見てないか?」



猛が何人かに声をかける
みんな、首をかしげるばかりだ。



「あ、俺見ましたよ。」



一年の寮生が手を挙げた


「どこにいた?」

「女の人と歩いてました。…あの人たち、どこかで見たことあるんですよね。」

「誰だかわかるか?」

「……あ!寮長!寮長の取り巻きの中にいた顔ですよ。」



猛と蒼斗は顔を見合わせた。



「どっちに行ってた?」

「あの岩場のほうです」



それを聞くと同時に蒼斗は部屋を飛び出していった。



「あの女たち、来てたのね!」



「あぁ。マズイことになってなきゃいいけど…」









< 77 / 217 >

この作品をシェア

pagetop