王子様は寮長様



朝になり、私は相馬先輩に支えられて別荘へ戻った。




「椎菜ちゃんっ!!」



別荘に着くなり、半泣きの奈緒先輩に抱き着かれる。



「心配したのよ~。見つかって良かったぁ」

「ごめんなさい、奈緒先輩。」



ワンワン泣く先輩。

他の人達も、起きて待っていてくれたようだった


「みなさん、ご心配おかけしました。」



ペコッと頭を下げる。

みんなが温かい言葉をかけてくれることが何より嬉しかった。

本当に皐月寮の人達は優しい。






「蒼斗、良かったな。見つけられて。」

「あぁ。悪かったな、猛。連絡入れられなくて」

「いや。蒼斗なら絶対見つけると思ってたから」



猛はそっと蒼斗に顔を寄せる。



「で?一晩、一緒にいて手を出したりとかしちゃった?」

「猛。」



蒼斗は猛を軽く睨む。



「出来るわけないだろ」

「…まぁな。でも気持ちがぐらついたりしなかった?」

「………いいや。」



蒼斗は逃げるようにその場から離れて行った。


猛はそんな蒼斗を見て、小さく呟いた。



「気持ち、ぐらついてんじゃん……」




< 85 / 217 >

この作品をシェア

pagetop