王子様は寮長様
「若いのに苦労をしてきたんだろうね。偉い子だね。」
「苦労だなんて…。」
苦労はしていない。
“父親”が金銭面ではサポートしてくれているし。ただ……
「ただ、少し寂しいだけです。」
「……お嬢さん、その寂しさは忘れてはいけない」
「え?」
「その分、人に優しくなれるというもんだ。」
おじいさんは何故か悲しそうな表情を見せる。
「お嬢さん、好きな人はいるのかな。」
突然言われ、私はドキッとしてしまう。
思わず照れて俯いてしまった。
「そうか。いるのかい。なら、その気持ちを大切にしなさい。寂しさを知るお嬢さんなら、人を深く思いやれるはずだ。」
おじいさんは微笑み、“私には出来なかったことだがね”と呟いた。
「おや、迎えがきたようだ。」
おじいさんの視線の先には黒い車が止まっている
「GPSというのは便利じゃのう。ではの。お嬢さん。」
「あのっ、ありがとうございました。」
おじいさんはニコニコ手を振り、去っていった。