―優しい手―
何が目的なのかも分からない ただ男に抱かれる『仕事』を済ませた後




どうしようもない疲労感に襲われ 目に入った公園で休む事にした




『仕事』の後にはシュウに会える―だけど、なんだか会いたくはなかった




だけど私には帰る場所がない




膝を抱いてうずくまり、時間が経つのを待っていた




“ねぇねぇオネーサン。……………”




男に腕を引っ張られ 顎を掴まれた瞬間、私の記憶はプツッと途絶え 次の瞬間に男達は転がっていた




闇の中に潜む気配―シュウ―




“フッ。さすがだな”



“ああ。アンタか…”



“俺で悪かったな”



シュウはスッと私の腕を取り歩き出した



何も話す事なく 真っ暗な闇の中を歩き続ける



今いる場所が 何処なのかさえ分からない



寒空の下を歩く



こんな時でも シュウの手はやっぱり温かい



シュウの手に繋がれる私の手は どうしようもないぐらいに熱い



“シ、シュウ?”



ヤツの名前を初めて呼ぶ


なのに、シュウは見向きする事なく ただ黙々と歩き続ける



“シュウ!”



シュウは肩をビクッとさせ 振り返った



振り返った時のシュウの瞳がとても優しくて切ない目をしていた



“シュウ…抱いてよ”



自分でも驚いてしまうぐらいの言葉をはく



テレビの一場面で聞いた事のある台詞



どういう意味があって言う言葉なのか ハッキリとは分からないけど…



きっと、とても恥ずかしい言葉なのだと感じていた







今日の私はどうかしてる






それでもシュウは何も言わなかった



何も言わずにまた、前を向き歩きだす。だけど、繋いだ手の力が さっきより強くなっていた



シュウも私も黙ったままで、冬の夜道には ただ私達二人の足音だけが響いていた




< 15 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop