―優しい手―
“いいか。たとえ俺が死んだとしても、お前は生きろ。お前は俺と違って強い人間だ。だから、どんな事をしても生きろ…”
初めてだった
シュウが私の前で、自分の感情を言葉に出したのは
後ろから抱きしめられ、耳元で囁かれる
その言葉の一つ一つが どれも丁寧で温かみを帯びていた
ツーッと私の頬を温かいものが流れる
今日のシュウは、どこか変だ
嫌な胸騒ぎがする
“シュウ。どこかに行くの?”
“俺はどこにも行かない。ずっとお前のそばにいる…ずっと、ずっとだ”
シュウは私をギュッときつく抱きしめたかと思うと 急に突き放す
“『仕事』だ”
また、お決まり通りに白い封筒を机に置き 何もなかったかのように玄関へと向かう
ただ立ち尽くすしかできない私は“また、来てくれるよね?”って聞くしかできなかった
“ああ。”
それから シュウは静かに部屋を出て行った