―優しい手―
シュウが居なくなった部屋は 本当に殺風景で、そこに居る事さえ息苦しい
幼い頃は この部屋に居られる事がどれだけ幸せだっただろう
だけど今は違うんだ
人間はズルい
ひとつ幸せを知ってしまうと 今まで幸せだった事を幸せと感じなくなる。それまでの幸せを平凡だと思う。そうやって欲張りになって、次の幸せを探すんだ。
シュウがいない
シュウがいない
シュウがいない部屋はイヤだ
幼い頃を思い出す
家に独りぼっちの私
家族のみんなは 楽しそうにお弁当を持ち、『遊園地』へと出かける
『遊園地』って何?
ジェットコースターっていう怖い乗り物があったり 観覧車っていう高い所にいけれる乗り物があったりする とっても楽しい所なんだって…
私は みんなが帰って来るのをじっと待つんだ
ニコニコしながら玄関を入り 私の顔を見ると、途端に不愉快そうな顔になる
わたしのこと そんなにキライ?
…早く出よう
私は封筒を取り 外に出た