―優しい手―




何もかも 心の中まで見透かしたような桜木ハヤトの言動が 私をイラつかせる




“ところでね。ひとつ、提案があるんだけど…。今日から僕のモノになってみては、どうだろうか?”



“?!”



“嫌かな? あんな小さくて狭い部屋で、細々と生活するよりもこの部屋で有意義に生活してみてはどうだろう?”



“………………”



“君にとって悪い話ではないと思うんだけど。それとも、何かあの部屋を出られない事情でもあるかな?”



“わ、分かったよ。…対象物の望む事は拒めないからね…”



“ハハッ。対象物か…。よし、決まりだ。とりあえず、君の部屋に案内するよ”



“あの、ちょっと待てよ。いきなりかよ”



“シュウには僕から話しておくよ。君の荷物は、彼に持って来てもらうようにしょう。”



そう言いながら桜木ハヤトは 私を部屋に通した



そこはとても広く、隅々まで手が行き届いていた。


人が二人ぐらい寝れるベッド

大きな鏡

大きなテレビ

磨りガラス越しに見えるバスタブ

様々な色や種類の花が生けられているテーブル



どうして私みたいな女が 桜木ハヤトに目をつけられたのか分からなかった


部屋に通されたものの どうしてイイのか分からず ベッドに腰掛ける



フワフワしていて 今までにない感触のベッド




…やっぱり居心地が悪い…



“気に入らないかな?”

“いや。大丈夫”


“何かあれば いつでも呼んでくれれば良い”


そう言い残して桜木ハヤトは部屋から出て行った






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