―優しい手―
あちらこちらにネオンの光りが照らし出される 繁華街
“こんな時は、少しでも人気の多い所の方が安全だからね…”
行く宛てもなくさまよう私達
車を運転しながら ハヤトはどこか電話する
“絢…鍵はどこにある?”
とても優しい口ぶりで話すハヤト
“ああ。分かったよ。君は、来ない方が良い………じゃあね”
フーッとため息をこぼし、携帯をしまうハヤトの横顔は安堵に包まれている。でも、その反面 どこか諦めにも似た顔をしていた
“さっきの人…ハヤトの大事な人?”
ふと、そう思いハヤトに尋ねる
“さぁね…僕にも分からないよ。だけど、彼女だけが僕を理解してくれているんだ…”
“私達、どこかでなにかを間違えたのかもしれないね…”
“そんな事はないさ…僕達の未来はこれからだよ”
照れ臭そうに言うハヤト
それからまた、ハヤトは車を走らせた
誰もが賑わう繁華街の中 私達の車だけが暗闇に包まれていた