―優しい手―
私達の車は繁華街を抜け 郊外にある廃墟化とした小さな一軒家の前に停まった
車の前には か細く背の低い女性がいた
“絢!”
ハヤトは窓を開け 叫ぶように女性の名前を呼んだ
“ハヤトさん、逃げて!”
絢と呼ばれる その女性がそう叫ぶと、その女性の後ろからは数人の黒ずくめの男達が現れた
“ハヤト…そいつを渡せ”
黒ずくめの男の一人が 淡々と話す
ハヤトは 何も言わず車を発進させる
“ハヤト!彼女はイイのか?”
“大丈夫さ。絢は黙ってヤラれるような娘じゃないからね”
口の端を少し上げ、微笑む
それからは、まるでアメリカの映画みたいなカーチェイスだった