―優しい手―
奴らは何台もの車で ピッタリと引っ付いて離れない距離で 迫り来る
スピードを加速したい所だけど、狭い夜道を走るには無理がある
もうダメかもしれない…
そんな空気が車内に流れた時だった
“桜木さん…”
震える身体を奮い起こしシュウが静かに呟く
“コイツを連れて逃げてくれ”
そう言い終わる前に シュウは走る車のドアを開け、飛び下りた
ドスッと鈍い音を立てたかと思った次の瞬間に シュウの姿はなく、ただドアだけがだらしなく開いたままだった
“シュウ!”
自分の発する声は、声でなくなっていて 手がガクガクと震えた
走り続ける車内から、後ろを振り返り小さくなっていくシュウを見つめた
“ハヤト。停めてくれよ”
ハヤトは何も言わずに 車を走らせた