―優しい手―
“親に捨てられたって?”
“俺の親父にはな、愛人がいてな。その愛人に子供がいてな…愛人と子供が可愛かったみたいでな、そっちに行って帰って来なくなった。その親父に愛想尽かして、親父によく似ていた俺も一緒に捨てられたってワケ”
…そっかぁ…。愛人の子供ってのが…きっとハヤトなんだ。
“シュウも、苦労してんな…”
“まっ。俺なんかは、桜木さんに拾われたから、マシなもんさ。他に拾われたヤツらはゴミ同然みたいな扱いだからな…”
“じゃあ。私もシュウに拾われて良かったよ。”
“じゃあは余計だ、じゃあは…”
“悪りぃ悪りぃ”
“中に入るか?”
ふたり向き合って湯舟に浸かる
静かに時が流れる
…このまま、ずっと永遠に時間が止まればイイのに…