―優しい手―
“落ち着くんだ!”
ハヤトの一喝で 我に返った時には、もう手遅れで
私の拳には滴り落ちるぐらいのヌルっとした血液がついていて…
目の前には顔の形も跡形ない程の さっきの二人組の男が血まみれになって転がっていて…
絢さんの胸に抱かれた青ざめた顔のシュウ
私をまるで手に追えない獣を見るような目で見つめるハヤト
“もうイイだろ”
いつもの冷静なハヤトの声で 冷静さをまた取り戻し倒れた男の上から下りると、シュウのそばに寄った
“シュウ?大丈夫か?”
額に汗をかき、目は虚ろなまま私を見たきり、何も応えない
“シュウ。頼むから、私を置いて行くなよ…”
“…お前は、俺とは違う。”
絞り出すように話すシュウ
“何も話さなくてイイから…なっ?”
シュウの手を握りしめるけど、あの温かいシュウの体温は感じられない
“サ・ヨ・ナ・ラ”
シュウの優しい手は 私の手をほどくみたいに地面へとゆっくり落ちていく
“イヤだ。イヤだよ、シュウ。置いて行くなよ。”
シュウの頭を抱きかかえ シュウの唇にKissをしても シュウからは何の応答もない
“シュウ?シュウ?シュウ!シュウゥゥゥ―――――――――――――!”