―優しい手―
―ハヤト―
シュウが愛恵と呼んでいた彼女は まるで殻に閉じこもってしまった子供のようで
食べる物も飲む物も充分に摂らず
まるで、なにもかも忘れてしまったかのようだ
シュウの遺体は普通に葬式さえあげる事が出来ず ただ僕達で静かに埋葬してあげる事しか出来なかった
それは…僕達の行く末を示していた。僕達連れ去られた人間は、この世界から抹消されている。生きて行くにも、もちろん…死んで逝く時にも僕達はこの世にいない存在なんだから…亡霊と同じだ。
それは、彼女も同じだ
彼女はシュウの着ていた血まみれの服を さも、シュウを抱きしめているかのように 愛おしそうに抱きしめている
彼女もたくさんの意味で亡霊となっている
僕と絢は そんな彼女にどうする事もできなくて、ただ見守るしかなかった
組織の人間達は 今回の1件―シュウを殺した事―で、甘っちょろくなりつつある組織の下級部の奴らに『見せしめ』が出来たようで、満足しているらしい
それによって僕達が シュウをかくまったという事実はどうでもよくなりつつあった
僕はシュウを助けられなかった
今回こそは シュウを助けたかった
だけど、僕は助けられなかった
シュウ… 君に助けてもらうのは これで二度目になるネ