―優しい手―




“愛恵…シュウの所に行くよ”



それまで、シュウの名前は伏せていた



彼女には残酷な気もしたけど これが最期だと知らせたかった



“シュウの所に…”



“行くよ”そう、言い終える前に 今まで自ら立ち上がる事さえしなかった彼女が 立ち上がったのだ


スッと立ち上がり 何事もなかったかのように 片手にシュウの服を持ち、立つ事さえままならないはずの身体で 歩き出した


“さあ。行くよ”



僕が手を差し出すと 愛恵もそっと手を差し出す


“ハヤトさん…愛恵さん。そろそろ行きましょう”



あれから絢は献身的に愛恵と僕に尽くしてくれている



“じゃあ愛恵さん着替えましょ?”



僕は部屋を出た








< 82 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop