―優しい手―
“愛恵…シュウの所に行くよ”
それまで、シュウの名前は伏せていた
彼女には残酷な気もしたけど これが最期だと知らせたかった
“シュウの所に…”
“行くよ”そう、言い終える前に 今まで自ら立ち上がる事さえしなかった彼女が 立ち上がったのだ
スッと立ち上がり 何事もなかったかのように 片手にシュウの服を持ち、立つ事さえままならないはずの身体で 歩き出した
“さあ。行くよ”
僕が手を差し出すと 愛恵もそっと手を差し出す
“ハヤトさん…愛恵さん。そろそろ行きましょう”
あれから絢は献身的に愛恵と僕に尽くしてくれている
“じゃあ愛恵さん着替えましょ?”
僕は部屋を出た