サンプル彼女 (モテ小悪魔の策略?)
京子の考えではこうだ。
―――合コンの時はアピールはしない。
笑顔と相槌は構わないが、自分からは行動しない。
ただ、覚えてもらえないと意味がないことも分かっている。
だからと言って、ボディタッチやサラダの取り分け、おかわりのメニューを差し出すことはしない。
一度話せばいい。
「合コンなのに私だけノリが悪いよね。お酒の力借りなきゃだめだな。
緊張する、せっかく出会いを探しに来たのにこんなんじゃただのお食事会だね」
合コンに来たことがない、とは言わない。
けれど大人しい彼女を見れば、男は“慣れていないんだ”と勝手に解釈する。
お酒が飲めない、とは言わない。
けれどたかがチューハイにお酒の力を信じる姿に、男は“弱いんだ”と勝手に思い込む。
人見知りだ、とは言わない。
けれど明らかに緊張している様子に、男は“守ってあげたい”と勝手に使命を感じる。
彼氏が欲しい、とは言わない。
けれど恋愛をしたいことを仄めかす発言に、男は“自分でもいけるのでは”と勝手に自信をつける。
少しくらい胡散臭い発言でも、それがウソではないように京子は瞳に力を込める。
そうすればほとんどの男がすっかり自分の発言を信じ込む術を知っていた。
京子はぬかりがない。