夜が明ける前に
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「おはよー兄ちゃん。」
「おー。」
陽が顔を出したのを見てからリビングに入ると、いつものように兄の祥一郎が朝御飯を用意している最中だった。
「卵焼き、今日は甘いのがいいな。」
背後から作業を覗き込みながら言うと、わかったからどけ、と邪魔者扱いされた。
むっとしたものの、要求は飲んでくれたのでまあいいとしよう。
卵焼きまだかなー、なんて考えながら、冷蔵庫から牛乳パックを取り出してそのまま飲んでいると、ぺしん、と軽い衝撃が頭を走った。
「ラッパ飲みは止めろって言っただろうが。」
「…おはよー父さん。」
呆れ顔でこちらを見る父にへらりと笑って挨拶すると、盛大に溜息をつかれた。
「朝から溜息って景気悪いよ?」
ははん、と馬鹿にしたように笑うと、父は呆れ顔のままリビングを出ていった。
そんなことは気にせずにテレビをつけると天気予報をしていた。
今日は晴れ、時々曇りらしい。
お天気お姉さんが言っているんだからそうなんだろう。
朝焼けが綺麗だったから、てっきり晴れかと思っていた。
曇るのは寂しいなぁなんて思いながらテレビを眺めていると、兄から声が掛かった。