夜が明ける前に
「………ん……あれ。まだいたんだ。」
「ん。気持ちよさそーに寝てたねー」
ぼやける視界に写るのは、銀色の空と藤元の笑顔だった。
頬杖をついて笑う彼は何故か機嫌が良さそうだ。
訝しげに思いながらも体を起こして少し伸びをする。
何だか気分が軽い。
さっき見た夢のお陰だろうか。答えが出たことはかなり大きいだろう。
「お。桜木!」
いきなり大声を出したかと思えば腕を引っ張られて柵のところまで急かされた。
指差す方に目をやると、藤元の興奮に共感した。
「うわ…きれー…」
「すげーなー…」
所々入っている雲の切れ目から夕陽が射していて、街がスポットライトを浴びているみたいだ。
…一筋の光、か。
ふふっと笑ってちらりと隣を見ると、柔らかに微笑んでいる藤元と目が合った。
「…さっきの、教えてあげるよ。」
「うん」
「…笑って過ごすんだ。大好きな人達には、笑顔を思い出してほしいから。」
「…そっか!」
藤元はひひっと笑って、それから私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
あまりにも乱暴な撫で方につい私も笑ってしまう。
「…帰るか!」
「…あんたと帰んのやだ。」
「はあ?!こんなカッコいいのと帰れるんだぞ!」
「…それがやなんだよ」
「なんだそれ……ちょ、待てってー」
たぶん、こういうことを大事にしなければいけないんだ。
それが、生きてる私に出来ることなんだから。