夜が明ける前に
「…とことん本能で生きてるな、お前らは。」
呆れたように息を吐きながら人数分の紙皿やお箸を用意している兄を横目にビニールシートに座ろうとすると
「あ。加代はこっちこっち。」
と父が右隣をポンポンと叩くので、不思議に思いながらも素直に従う。
しかし兄が腰を降ろした場所を見て納得。
「一回やってみたかったんだよー」
にこにこしながらそんなことを宣う父の白髪頭を軽快に叩いてやる。
目を覚ませ、エロオヤジ。
「おまえ、俺は仮にも親だぞ?!手加減しろよ!」
「ごめん、心底イラッとしたからつい。」
頭を押さえながらぶーぶー言う父に冷やかな視線を送りながら兄と藤元の間に場所を移動させた。
「親父の言い方がまずい。」
「おっさん、ストレートすぎ。」
兄と藤元の言葉に何か反論しているようだが、無視してお茶を飲む。
ほんと、我が父ながら理解を越える。
「若い娘をはべらかすのは男の夢だっ!」
「「黙れエロジジイ。」」
兄妹で一蹴するも、めげない父。
誰にも解って貰えない悔しさからか遂には拳を挙げて力説する姿は何とも滑稽だ。
冷やかな視線に耐えれなくなった父は、終いには隣の京香さんに泣きついていた。
しかしそれを見て兄が黙っているはずもなく。
修羅の如く怒る兄を見て、父は面白がって京香さんを抱えて走っていく。
それを無言で追いかける兄。
いい大人が芝生を全力疾走している。
内一人は中年の親父に姫抱っこされながら。