夜が明ける前に
***
「初対面とは思えないほど馴染んでたね、藤元さん。」
「いやー、桜木ファミリー良い人ばっかだもん。楽しかった!」
藤元と二人で、赤く染まった街中を歩きながら、笑い合う。
あとの三人はアパートに向かって、私は駅までの見送りだ。
立ち並ぶ家々からは美味しそうなにおいが漂ってきて、もう夕飯の時間かぁ、とぼんやり思う。
「結構な時間遊んだんだねー…」
徐々に暗くなり始めた空は、哀愁を漂わせるには十分だ。
「「…帰んの寂しーね。」」
ぽつりと呟いた言葉が重なる。
…おんなじこと、思ってたんだ。
「ふふっ…今日はシンクロデーだ。」
「あー。そういや昼間も被ってたなぁ」
ひひ、と笑っているといつの間にか駅に着いていて、二人で顔を見合わせて、また笑った。
じゃあね。と言おうとした時、藤元はふと真顔になってこちらを見下ろす。
首を傾げると、ぽつぽつと言葉を落としていった。
「…今日さ、本当に嬉しかったんだ。」
「ん。何が?」
「……誘ってくれて。やっと友達になれたって感じた。」
照れているのか、俯いて喋る藤元の声は小さかったけど、確かに届く。