夜が明ける前に


***



「初対面とは思えないほど馴染んでたね、藤元さん。」


「いやー、桜木ファミリー良い人ばっかだもん。楽しかった!」



藤元と二人で、赤く染まった街中を歩きながら、笑い合う。


あとの三人はアパートに向かって、私は駅までの見送りだ。



立ち並ぶ家々からは美味しそうなにおいが漂ってきて、もう夕飯の時間かぁ、とぼんやり思う。



「結構な時間遊んだんだねー…」


徐々に暗くなり始めた空は、哀愁を漂わせるには十分だ。




「「…帰んの寂しーね。」」


ぽつりと呟いた言葉が重なる。


…おんなじこと、思ってたんだ。







「ふふっ…今日はシンクロデーだ。」



「あー。そういや昼間も被ってたなぁ」



ひひ、と笑っているといつの間にか駅に着いていて、二人で顔を見合わせて、また笑った。

じゃあね。と言おうとした時、藤元はふと真顔になってこちらを見下ろす。

首を傾げると、ぽつぽつと言葉を落としていった。




「…今日さ、本当に嬉しかったんだ。」


「ん。何が?」




「……誘ってくれて。やっと友達になれたって感じた。」



照れているのか、俯いて喋る藤元の声は小さかったけど、確かに届く。


< 42 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop