りんごを剥く手
私はうるさすぎる心臓を
無視して話しかけた。
「あなたは誰??」
そう聞いたら
あなたは目を
一度大きくあけて、
また目を細めて笑った。
意地の悪い笑い方ににも
見えるのに、
この顔が私は
好きだと思った。
「君のお兄ちゃん。」
私の頭から
あなたの手に移動した
花びらをベットに
落としながら
至ってナチュラルに言う。
「は??」
「って言ったら困る??」
「困っ....」
困るに決まってる。
なのにあなたの顔が
あまりに綺麗で、
近いから
「...困らない。」
そう言ってしまった。
思えばその発言が
我が人生最大の失言だ。
何で流されてしまったのか。
だって無理なのに。
初めて目に入れたから
一度だって
「お兄ちゃん」
として見れたことは
なかったのに。