りんごを剥く手
「こっんにちわぁっ。
夏帆だよっ。
あなたが冬希ちゃん??
初めてましてっ
かわいいね-ってあれ??」
「ど、どなたですか??」
あの時ほど困惑したことは
多分人生で
無いんじゃないかな。
あなたと夏帆さんを
代わる代わるみて、
何とか口に出したのが
それだったから。
「やだっ
ダーリンまた言ってないん??」
あなたは苦笑しながら
うなずいた。
私はダーリンが
あなただって事実が
耳から聞こえてきて、
景色がぼんやりした。
「わゎっ
泣いちゃったじゃんっ。
そりゃ驚いたよね、
知らない人だもんね。
ごめんね??」
違うんです。
知らなくて
泣いたんじゃないんです。
少し受け止めきれなくて、
勝手に流れてきたんです。
言える訳なくて
私は更に泣いてしまった。