りんごを剥く手


辛くさせる
原因はまだあった。


お父さんだ。
死期がわかってから、
月に二度は必ず
来るようになった
お父さん。

タイミングが
分かり易すぎて
笑ってしまうくらい
だったけど、
そんなお父さんは
会う度疲れていった。

理由なんか
分かり切ってた。
ごめんなさい、
ごめんなさい。
お父さん..


夜遅くまで家に戻らない
って聞いたの。

どうして
私は死ぬんだろうね。
死ななければ
鶴のように
恩返し出来たのに。


嘘。
鶴みたいになんか無理。
だけどね、
一緒にいることなら、
いくらだって出来たのに。


私、悔しいよ..。
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