りんごを剥く手

「冬希ちゃあんっ
聞いてるぅ??」


ずっと呼んでたらしい。
ほっぺを膨らませて私を
睨んでるらしかった。
らしかったっていうのは、
上目遣いにしか
見えないから。


あなたの目にはこれが
たまらなく
愛しく映るんだろうな。

悔しい。

「あの、
いつなんですか。」


「何が??」

膨れるのをやめて今度は
ニコッと笑う。
百面相だと思った。

「いつ、出会ったんですか??」

とことん聞いてやろう、
私は決意した。
あなたに聞いたって
良かったけど、
あんまりデレデレされても
私の身がもたないし、
せめて
予習したら良いかなとか
思ったから。



「一年前よ。」


「詳しく知りたいな-、
全然喋らないから
気になっちゃって。
駄目ですか??」


「そんな訳無いじゃない。
聞いて聞いて??」


無邪気にはしゃぐ
夏帆さんの笑顔が
まぶしくて
しょうがなかった風景が
今目を瞑っても思い出せる。


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