りんごを剥く手


同じ否定なら。
言ってしまった方が良い。


そう思った。
こんなに今が
寂しくなるなんて
予想外だったけど。


「好き。」


「え??」


ん??じゃないのね。
それはそれで複雑。


「好き、好き、好きだよ。
好きだからお兄ちゃんなんて
呼べない。
夏帆さんのこと
知ってても。
好きなのに...
何も知らないのが
悔しい.....の。」



「冬希...」

それだけいって
黙ったあなた。
見開かれた瞳は
閉じることを
忘れたかのように
私をじっと見つめてた。



そして、
一言ばかりの
残酷を残して消えた。



「俺も、好きだよ。
だからバイバイ冬希。」



あなたは
私の前から消えた。



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