もしも願いが叶うなら
「頑張ったんだけどなぁ〜。俺やっぱ不器用だ。」
心底申し訳なさそうに言う悠くんを無視し
あたしは無言でトーストをかじった
苦くてしょっぱかった。
「さっちゃん!食べるなぁ!!」
「悠くん。ごめんね。」
焦る悠くんをまた無視して
あたしは泣きながら言った
「何が?」
すごく落ち着いた声が返ってきた。
「悠くんからお母さんとってごめんね。」
止まらない涙を拭くこともなく
あたしは続けた。
「幸は事故で死んだんだよ、さっちゃん。」
あたしの手からトーストを奪いつつ
悠くんは静かに言った。
「違うよ。あたしが見に来てって言わなかったら、あたしがブラバンなんか入らなかったら、あたしが、生まれてこなかったら」
「さっちゃん。」
悠くんが静かに遮った。
「過去は変えられないんだよ?何をしたって事実は変えられない。幸は死んだ。今さっちゃんが言ったことは、確かに原因の一部だよ。だけど自分を責めちゃいけない。その気持ちからはマイナスしか生まれない。」
「でも、」
「分かるよ。責めないと余計苦しいんだろ?ちょっとでも自分の悪いとこ見つけたら、もう無視できないもんな。」
「うん」
「俺は無責任にさっちゃんは悪くない!なんて言わないよ。罪悪感はずっと背負っていけばいい。大事なのは負けないことだ」
「負けないこと?」