私は嘘で出来ている。
「いらっしゃい」


ドアを開けてくれたのはエプロン姿の新菜だった。


今日は有本君の姿はなく、化粧とウイッグでフル装備の、完全な新菜だ。


無意識に落胆する。


「お邪魔しま~す。あ、ご飯の匂い」


「いっぱい作ったから沢山食べてってね」


新菜が自信満々の笑顔で言った。


食卓では和洋折衷な料理が湯気を立てて待っていた。


自然と食欲が湧いてくる。


「ではでは、新菜の初MVPを祝して乾杯!」


「ありがとう~」


私達はビールで乾杯し、熱々のグラタンから手をつけ始める。


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