Everything
4月

「ハル!、ごめんね?遅くなって」

「ううん、僕も今ついたとこ。」

「そっか、今日は生徒会役員の集まりがあってさ」

「彩って生徒会役員だったっけ?」

「うん、今年から。」

ハルとそんな会話を交わしながら、ハルの車に乗り込む。
私、榎本彩は、高校2年生。

ハルっていうのは、23歳の社会人。
本名今井晴琉
大手の会社に就職している、まじめな人だ。

「お仕事お疲れ様です」

これが私の日課。

車に乗ったら、必ず言う。

ハルは、その時々で返事が違う。

「どういたしまして」とか、
「今日はすんごい働いたんだよ~」とか。
気分によっては、その日逢ったことを話してくれたりもする。

その話を聞きながら、私は家に帰る。

ハルに迎えにきてもらうようになったのは、高校一年生の春。

元々遠い親戚で、小さい頃に何度か遊びにいていたことがあったから、存在は知っていた。

私は高校入学と同時に実家のある千葉をはなれて東京にきて一人暮らしを始めたので、心配したお父さんとお母さんが、まじめなハルに頼んで送り迎えしてもらうことになっている。

お母さん曰く、
「晴琉くんなら心配ない」そうで。

でもそんなお母さんの期待を裏切るかのように、事実上ハルとはつきあっていた。
夕ご飯ごちそうしてくれるし、暇だったら遊びに連れて行ってくれたりもするし。
何より、哀しいことがあったら黙ってその話を聞いてくれる。

学校の同級生の男子より、ずっといい。
嫉妬だとか束縛だとかに悩んで恋愛してる友達より、私は幸せだったかもしれない。

ハルも、私も、お互いを信じてたし、自由だった。
















< 1 / 8 >

この作品をシェア

pagetop