Everything
一通り回り終わって、自動販売機でジュースを買い、ベンチに座る。

ふと、コンクリートの隙間から生えている花を見つけた私は、
「この花なんて言うの?」と聞いていた。

「すみれだよ」とハル。

私はすみれの花の名前だけしか知らなかった。

「すみれはね、こうやってどんなところにでも咲くの。強い花なんだ。彩も強い人になってほしいな。この先、どんな哀しいことがあっても、たとえば彩の話を僕が聞いてやれなくなっても、それに耐えられるような人になってほしい。僕はすみれの花が好きだから、また来年の春も見にこれるといいな。」

やけに真剣な顔をしてそんなことを話すハルは、いつものハルじゃないみたいで。
・・・少し寂しくなった。

「ハル?」
「・・・な~んてね♪」

そう言ったハルは、寂しげに笑ったから。

「ハル、私、強くなるから。絶対絶対強くなるから。すみれみたいになるから。だから、来年も、一緒に見に来よう」

ハルは、何も言わず、ただしっかりうなずいていた。
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