Everything
帰り道。
ハルはずっと黙ってて。
怒っているようにも、悲しんでいるようにも見えた。
「ほんとにここでいい?」
今日は駅で降ろしてもらって、家まで歩いて帰ることにした。
「うん。ハル、疲れてるんでしょ?
体に良くないよ。気をつけてかえってね?」
そういうと私は車から降りる準備を始める。
駅の駐車場のど真ん中。
帰る人が多い6時過ぎ。
急いで帰らないと。
そんなことを考えながら、バックに出したものを入れていたそのとき。
「・・・彩、帰らないで。」
「へ?」
「ここにいて」
顔を上げると、ハルは泣いていて。
ゆっくり閉じた目からは、一筋の涙が静かに流れていた。
「ハル?どうしたの?どっかいたいの?」
次第に泣き方は激しさを増し、悔しそうにハンドルに顔を当てて泣く。
でも、その姿は驚くほどに綺麗で。
私はただ、そんなハルの背中をさすることしかできなかった。