Everything
30分ぐらいだろうか。

ハルは泣き続けて。


やっと泣きやんだ頃には、もうすっかり辺りは暗くなっていた。

「・・・なんかあったの?」

ハルは首を振る。

「じゃあどうして泣いているの?」

「なんでもない、やっぱり送っていくよ」

ハルは話をそらすように小さな声で、でもしっかりそういった。

車を降りるとき。

「じゃあ、気をつけてね。我慢しないで、話したくなったら、いつでも聞くから。」

といってハルの方を見る。

ハルの顔が目の前にある。

当たったか当たってないかわからないくらいに唇を重ねると、私を抱きしめた腕は、想像以上に細くて。

「卒業するまではしないって言ってたじゃん」

「ごめんごめん」

そういうと、ハルは腕をゆるめて

「またね」

って、そういった。

だけど、その目は今にもまた泣き出しそうで。

精一杯

「うん、またね」

っていってみたけど。

私の声は震えていた。

発信源がわからない怖さと悲しさに、私は押しつぶされそうで。

いつもみたいに走り去っていく車を見ながら、私は緊張の糸がほどけたかのように泣いていた。





生涯最初で最後のハルとのキス、ハグ。

春とはいえまだ寒い夜の真ん中。

私たちは暖かかった。



< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop