恋時雨
「帝の…帝の弟君の、嫁にならなくてはならないんです。もう、安時様とはいられない…」

初香の言葉に、安時は固まった。

帝の力があるのだから、断れない。

もう二度と会えない。

「嘘…」

安時の瞳から、一筋の涙がこぼれた。

「…約束は?海…は?」

「行けません」

「また、都には…?」

「行けません」

「もう一度、もう一度再会は…」

「できませんーー…」

今度こそ、安時の瞳から流れる涙は止まらなかった。


「初…香…っ」

「さよなら。さよなら…っ」

「ま…っ行く…な…」

「愛していました。誰よりも…安時様だけを。今も…いいえ、きっと…これからもっ」
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