恋時雨
夕日で橙色に染まった建物。

少しだけ、さっきよりも涼しくなった、生暖かい風。

揺れる花。

「安時殿」

隆教の爽やかな声を聞き、十七歳の少年、安時は振り向いた。

「何でしょうか、隆教殿」

ニコッと笑った安時は、かなり整った美しい顔だ。

「私の妹が白拍子でして。四日後に、ここで舞うことになったんですよ。見にきてくれますか?」

隆教は、穏やかに笑ってみせた。

「…妹君ですか。はい、喜んで見に行かせて頂きます!」

白拍子を見るなど、初めてのことだ。
安時は、目をきらきらとさせて言った。

「…よかった。ありがとう、安時殿」

そう言って、隆教は一礼して去っていった。
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