恋時雨
「私などでよければ、喜んで」

初香は、ニコッと微笑んだ。

「初香殿でいいんじゃない。初香殿がいいんですよ。俺は」

安時はそう言って、力いっぱいに抱きしめた。


「愛していいですか?初香…」

安時は、かすれた声で「殿」を付けずに初香の名を呼んだ。

「愛していてください。私もあなたを愛しますから」

初香は、笑顔で安時の手を握り締めた。
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