はつ恋
光太に引っ張られる右手が痛い。だけど佳祐を見れない私は教室にいたくなかった。



光太も何も言わない。私の手を引っ張ったまま、自転車置場へ来た。



「亜子は俺の自転車の後ろに乗れ。」と光太が言う。


私が「恥ずかしいよ。」と言うと、「中学の時はいつもこうやって、二人乗りして帰ったよな。」



「だってもう中学生じゃないんだからね。光太分かってよ。」



光太は笑いながら、「そんなの関係ないだろう。亜子は回りを気にし過ぎだよ。」



「うん。」今日は何故か光太の言葉を素直に聞くことにした。



光太はいつも私が困ってる時助けてくれる。



この大きな暖かい背中にどれだけ助けてられたことか。



「光太ありがとうね。」と背中ごしに私は言った。



光太は「ああ。」としか言わなかった。



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