Star Dust ~星のカケラ~
「た、戦いなんてないですから。対立くらいはあるけど、命を賭けるとか血が流れるとかいったことは」


「良いな。そういうの。すごく良いとこだったんだ、ユズがいたところ」

ってことはここは戦があるんだよね……


王子がこんな暢気でいいのだろうか。


「王都まではどのくらいかかるのですか?」


「大体5時間くらいかな。この調子ならお昼過ぎにはつけると思うけど、マレンゴ」


柚子の問いに答えるとシューは愛馬の名前を呼び、後ろを走っていた柚子の隣につけた。


「畏まるなって言ったろ。敬語禁止。これから使ったら」


な、整った顔立ちがこれまでにないってくらい近くに。


唇に感じる生温かい感触。


く、くるしい。い、息が。酸素が不足して思考回路が回らなくなる。


ファ、ファーストキスが……


「使うたびにこうだから」


妖しく笑うとまた前方を走るレイの方まで馬を進めた。


「王太子殿下」


「だって、可愛かったから」


つ、つ。もっとロマンチックに考えていたのに…好きな人と考えていたのに。


返せー私のファーストキス。


叫ぶことも出来ず、荒い呼吸を整えながら、落馬しないよう馬を操ることに神経を集中させた。




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